エネミー・オブ・アメリカ
Enemy of the State 1998年 米 トニー・スコット監督
緻密で完結した、とても大人の作品。
★★★★
大人、だというのは、この作品が、「狡くない」映画、「消化できている」映画だということ。
「狡くない」というのは、エピソードを隠したり切捨てたり付け足したりをしていないこと。事実の組み合いそのものが、流れを生み出しているといこと。
「消化できている」というのは、(とくにこの映画の企画をはじめたころは)社会派的にスキャンダラスな内容であったはずの、NSAという題材の扱い具合のこと。あるいは、『カンバセーション…盗聴…』へのオマージュの示し方のさりげなさのこと(例の斜めに長く伸びる影が、ほんの数秒映るだけで充分うれしい)。佇まいのみならず、短い出演時間それ自体が、大都会のビルの谷間を思わせる、ガブリエル・バーンの、贅沢にして適切な使い方なんかのこと。(『タクシードライバー』のトラヴィスと同じ服装だというのには気付かなかった。)
監視とは、「世界」を網羅する技法のこと。そしてそれ以上(以前)に「世界」を切り取る技法のこと。それが動機の手にかかれば、浅ましい政治へと落ち込むだろうし、(この作品のトニー・スコットのように)自己を認識と製作の作業のうちに滅却させていくならば、それは映画になるだろう。
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