愛人/ラマン
L’Amant 1992年 仏・英・ヴェトナム ジャン=ジャック・アノー監督
「本番」シーンよりも。
★★★☆
派手な靴をはき、男物の帽子をかぶる。
当時の植民地でこんな帽子をかぶる若い女はいなかった。地元の女でさえ。
この帽子は私のあかし。
私らしさを象徴する大切なもの。
ジャンヌ・モローの声に、観ていてこみ上げてくるものがある。うす暗い乗合バスの車内。格子越しの後ろ姿に”apart”という語が浮かぶ。
ごく個人的に、近接するノースリーブや踝というのに、かなわん、という感じがしていたのだけれど、またそこから反転、一気に元も子もないところに飛躍するのが、苦しかった。上品下品ということではなくて……(こういうことを言える人間ではない)、ようは、映画が綱を渡らせてくれるかということ。
帽子をもった両手を離してみる。落ちるか舞い上がるかという一瞬の感覚があるはず。
男も女も、とりあえずそこは割り切った、というつもり。そうするには口実は尽きない。人種と、経済力と。「誰でもよかった」「もともと愛してなどいない」。
船の上で泣き崩れるのは、話すことのない電話は……、それこそが愛、というよりは、ただそういう感覚があったということ。
全部手放すわ。引き払うの。
心残りは鉄製のベッドだよ。
フランスのベッドは柔らかすぎる。
私はお前と違う。勉強も要領が悪かった。それにずっと貞節だった。
あの人は恩人だよ。金持ちで、慎み深い。
横たわる母親(フレデリック・マイニンガー)の彫像のような姿。個人的に、『ラストエンペラー』を超えるかもしれない…。木立を抜ける自動車。でこぼこの橋を渡る。
あなたは牛よ。目線は私の肩の高さに。
同級生と踊るシーンは鮮烈だった。
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