ワイルド・アット・ハート
Wild at Heart 1990年 米 デヴィッド・リンチ監督
土着と抽象。
★★★★
ローラ・ダーンは生意気な胸の形をしている(若さだ)。
この監督の本来の器量は、冒頭の階段シーンのへっぽこ感にあるのだと思うけれど、一方で、クリスタル・ガラスに封入したような晩餐のシーンとか、あるいは、時折不意に挿入されるアンジェロ・バダラメンティの、泥濘を素足で歩いていて急に水が冷たくなっているところに踏み入れたようなシンセ・パッドに、ヴィデオ的作家にとどまらない映画性を感じる。
愛についての映画、と言えるのかもしれない。そこを取って消費すればいい、とするには、それ以前に横たわっている奇妙な領域のことを思う。アメリカの土着性といっていいのか。『アラバマ物語』を、人種差別の、子供の世界の、もっといえば南部の映画とも言い切れないのに似ている。ディレイのかかったカントリーソングや、赤ら顔の農夫の引き攣った笑顔といった「形象」なら、『マーズ・アタック』あたりにもあるもの。
うまく言えないが、「やっぱり」というように選び取られたものは、すでに土着性ではない。その意味で、D・リンチは、これもまたうまく言えないが、「普通」の映画監督だ。(たとえば、テリー・ギリアムなんかは「普通」じゃない)。
阪奈道路でも映画は撮れるし、でも、それは「阪奈道路」ではなくて、という。
カメラを動かす(もっといえば回す)前に、俳優が口を開く(もっといえば画面上に立つ)前に、することがあるのを感じる。そういう面倒くさいことに比べると、自分がこの映画を見ていて楽しんでいるということは(さえ)、言説の一つにすぎないんだという幻滅はある。
イザベラ・ロッセリーニはかっこよかった。
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